WordPressのバックアップは、データ保護の最重要課題です。本記事では、プラグインを使った簡単なバックアップ法やFTPやphpMyAdminを利用した確実なバックアップ手順、さらにサーバー障害時のリカバリ方法を解説します。
本記事の読者層は以下の方を想定しています。
- WordPressで自社サイトを運営している事業者
- サイト運営の知識が少ない中でトラブル対策を考える方
- 将来的なシステム障害に備え、バックアップ戦略を立てたい方
WordPressのデータバックアップの必要性
サイトがダウンした場合や、誤操作でデータが消失した場合に備え、定期的なバックアップが不可欠です。WordPressのデータは、記事や設定、画像ファイル、プラグイン、テーマファイルといった様々な要素から成り立っており、サーバーが突然停止するリスクを考慮して、万全なバックアップ体制を構築しましょう。
WordPressのデータバックアップと復旧手順
WordPressプラグインを利用する方法
バックアップ専用のプラグインを使うことで、簡単にデータを保存できます。初心者でも扱いやすく、ボタン一つでバックアップを作成できるのが特徴です。
- All-in-One WP Migration
無料で使用できる容量が500MBまでと制限がありますが、直感的に使いやすいです。サイト全体のバックアップや移行も可能で、エクスポートしたデータを新しいサーバーやWordPressサイトにインポートするのも簡単です。 - UpdraftPlus
自動バックアップのスケジューリング機能があり、Google DriveやDropboxなどクラウドへの保存が可能です。頻繁にバックアップを取りたい場合やクラウド保存をしたい場合に便利です。 - BackWPup
クラウドやFTP、ローカルディレクトリなど複数の保存先に対応しており、特定のファイルやデータベースのみをバックアップすることも可能です。
手動でファイルとデータベースをバックアップする方法
WordPressのファイルとデータベースを個別にバックアップする方法です。プラグインを使わずにバックアップしたい場合や、特定の構成を維持したい場合に適しています。
- FTPでファイルをダウンロード
FTPクライアント(FileZillaなど)を使ってサーバーに接続し、WordPressのルートディレクトリ(通常は「/var/www/html」など)からすべてのファイルをローカルに保存します。これには、テーマ、プラグイン、画像、設定ファイルなどが含まれます。 - phpMyAdminでデータベースをエクスポート
サーバーの管理画面からphpMyAdminにアクセスし、WordPress用のデータベースをエクスポートします。エクスポート形式は通常SQLに設定し、ローカルに保存することでデータベースのバックアップが完了します。
次に、All-in-One WP MigrationとphpMyAdminによる方法を紹介します。
サーバー機能を利用してバックアップする方法
phpMyAdminは、Webブラウザ上でMySQLやMariaDBのデータベースを管理するためのオープンソースのツールです。SQLコマンドを入力することなく、GUI(グラフィカルユーザーインターフェース)を通してデータベースの作成や編集、バックアップ、データのインポート・エクスポートなどができます。これは、特にデータベース操作に慣れていないユーザーにとって便利であり、WordPressサイトのバックアップや復元に役立つ場面が多いです。
主な機能
phpMyAdminは多くの機能を備えていますが、以下が代表的なものです。
- データベースの作成・削除
新しいデータベースを簡単に作成したり、不要になったデータベースを削除できます。 - テーブルの作成・編集
データベース内に新しいテーブルを作成したり、既存のテーブルの構造を編集できます。 - データのインポート・エクスポート
CSVやSQL形式でデータをインポートまたはエクスポートする機能があり、バックアップや他のデータベースへの移行が容易に行えます。 - SQLクエリの実行
SQLコマンドを直接入力して実行できるため、複雑な操作やカスタマイズが必要な場合にも対応できます。 - ユーザー管理
データベースにアクセスするユーザーや、そのユーザーの権限を管理できます。
phpMyAdminとWordPressバックアップ
WordPressはMySQLまたはMariaDBデータベースを利用しているため、phpMyAdminを使ってデータベース全体のエクスポートを行うことで、データベース部分のバックアップが取得できます。以下は、WordPressのデータベースをバックアップする手順です。
- phpMyAdminにアクセスし、WordPress用のデータベースを選択します。
- 「エクスポート」タブをクリックし、エクスポート形式をSQLに設定します。
- 「実行」をクリックしてデータベースをダウンロードし、ローカル環境に保存します。
このようにして保存したSQLファイルは、phpMyAdminの「インポート」機能を使うことで、他のサーバーや新しいデータベースへ復元が可能です。
phpMyAdminのメリット
- 操作が直感的:視覚的なインターフェースで使いやすく、初心者でも扱いやすい。
- 多言語対応:phpMyAdminは多くの言語に対応しているため、日本語でも利用可能です。
- 多機能:バックアップ以外にも多くのデータベース管理機能を備えています。
注意点
phpMyAdminは便利なツールですが、データベースを直接操作するため、特に削除や更新を行う場合には注意が必要です。また、セキュリティ対策として、強力なパスワードを設定し、phpMyAdminへのアクセスを制限することが推奨されます。
WordPressプラグインを利用してバックアップを取る方法
WordPressのバックアップは、特に初心者にとってプラグインを活用することで手軽に行うことができます。ここでは、代表的なプラグイン「All-in-One WP Migration」を例に、使い方の手順と注意点を詳しく解説します。
All-in-One WP Migrationでのバックアップ方法
「All-in-One WP Migration」は初心者にも非常に使いやすいプラグインです。無料版ではバックアップ容量が500MBまでに制限されていますが、基本的なブログや小規模なサイトのバックアップには十分対応できます。また、データの移行や復元もスムーズに行えるため、引っ越しやサーバーの変更時にも重宝されます。
ステップ1:プラグインをインストールする
- WordPressの管理画面にログインします。
- 左サイドバーの「プラグイン」から「新規追加」を選択します。
- 検索欄に「All-in-One WP Migration」と入力し、プラグインが表示されたら「今すぐインストール」をクリックします。
- インストール完了後、「有効化」をクリックしてプラグインを有効にします。
ステップ2:バックアップを作成する
- 「All-in-One WP Migration」が有効化されたら、左サイドバーにプラグインのメニューが追加されます。「All-in-One WP Migration」→「エクスポート」をクリックします。
- エクスポート先を選択するオプションが表示されます。無料版では「ファイル」としてエクスポートする方法が一般的です。「エクスポート先: ファイル」を選択します。
- エクスポートプロセスが開始され、バックアップファイルが生成されます。生成が完了するとダウンロードリンクが表示されるので、バックアップファイルをローカルコンピュータに保存します。
ステップ3:バックアップデータの保存と管理
バックアップファイルはPCや外部ストレージ、クラウドサービス(Google DriveやDropboxなど)に保存しておくと安心です。ファイルサイズによっては、プラグインの有料アドオンでクラウドストレージと直接連携することも可能です。
バックアッププラグインの選定ポイントと注意点
- バックアップ容量の制限
無料版の「All-in-One WP Migration」には500MBの容量制限があるため、メディアファイルが多い場合や大規模なサイトには有料プランを検討する必要があります。 - 自動バックアップスケジュールの設定
定期的にバックアップを取るために、スケジュール機能のある有料プランや他のプラグインの導入もおすすめです。自動バックアップが設定されていると、うっかりバックアップを忘れるリスクが軽減されます。 - バックアップ先の選択
クラウドストレージと連携することで、物理的なトラブルに備えることができます。外部のストレージを利用する際は、セキュリティに注意して保存場所を選びましょう。
All-in-One WP Migrationは、WordPressのデータを簡単にバックアップするためのツールとして非常に便利です。日常的なバックアップに加え、復元もワンクリックで行えるため、初心者にとっても安心して利用できるプラグインです。
こちらは以下の記事でも紹介していますので、ご参照下さい。
実機が壊れたときのWordPressの情報抽出
実機が壊れた場合に備え、WordPressのデータ抽出と復元の準備を日頃から行っておくことが重要です。特に、レンタルサーバーを使用している場合、サーバー側が自動的にバックアップを提供しているケースが多く、個人ユーザーにとって負担が軽減されています。しかし、自宅サーバーを使用してWordPressを運用している場合は、ハードウェアの故障やメンテナンスがユーザーの責任となるため、予防策が不可欠です。
apache2+PHP+MySQLの環境自体を以下のDockerを利用して環境を保存しておくことは有効です。
実機が壊れたときのデータ抽出手順
以下は、実機のトラブル時にデータを抽出し復元する手順です。
- 代替サーバーの準備 故障したサーバーと同じ環境(OS、PHP、MySQLのバージョン)を備えた新しいサーバーを準備します。特にPHPやMySQLのバージョンが異なると、復元が難しくなる場合があるため、可能な限り同一環境であることが望ましいです。
- データベースファイルの移動 故障したサーバーのストレージが完全に失われていない場合、「/var/lib/mysql」ディレクトリにあるWordPressデータベースファイルを新しいサーバーに移動します。これにより、記事内容やユーザー情報などのデータが保持されます。データベースが破損している場合は、専門ツールを用いて修復を試みることもできます。
- WordPressファイルの復元 WordPressのコアファイル、テーマ、プラグイン、およびアップロード済みの画像などが格納されている「/var/www/html」フォルダをバックアップから復元します。このフォルダはWordPressサイトの構成に重要な役割を果たすため、バックアップが定期的に取得されていることが理想です。
- ドメインの設定と確認 サイトが正常に動作するためには、元のドメインが新しいサーバーで正しく設定されている必要があります。DNS設定を確認し、移行後のドメインのリンク切れや画像非表示といった問題がないようにします。
Dockerを利用した環境復元
特にサーバー運用に慣れていない場合、Dockerを使ってWordPressの環境をコンテナ化しておくことも効果的です。コンテナにより、サーバーのクラッシュや異なる環境に移行する際にも容易に復元可能です。
- Dockerイメージの作成 Apache、PHP、MySQLの構成を含んだDockerイメージを作成し、バックアップとして保存します。イメージがあれば、実機が壊れたときに新しいサーバー上で短時間で環境を再現できます。
- データボリュームのマウント WordPressのデータベースやファイルをボリュームとして外部ストレージにマウントしておけば、コンテナを再起動するだけでデータを保持したままサービスを復元できます。
サーバー機本体が壊れてしまい、データーが残っている場合はある程度復旧は可能です。
まとめ
機が壊れる前にバックアップを定期的に取り、さらにDockerのような仮想化技術を活用することで、万が一の際のデータ損失を防げます。特に自宅サーバーを運用している場合、手動でのバックアップスケジュールやシステムの冗長化を確保しておくと、万一の障害にも柔軟に対応できます。
次回の記事をご期待下さい。どうぞよろしくお願いいたします。
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